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March 23, 2017

写真日乗2017/03/21〜『伊賀越』の「岡崎」その2〜

L1000291ver3
撮影:2017/03/20 於:東京・国立劇場
Leica M10 Summilux 35mm f1.4 ASPH.

今回は半通しという構成となっている。それでも五幕七場であるから、壮大な劇である。

序幕   相州鎌倉 和田行家屋敷の場
二幕目 相州鎌倉 円覚寺方丈の場
      同   門外の場
三幕目 三州藤川 新関の場
      同   裏手竹藪の場
四幕目 三州岡崎 山田幸兵衛住家の場
大詰   伊賀上野 敵討の場

序幕、第2幕で話の発端を解説し、途中「藤川」で、だんまりなどの歌舞伎様式を見せ、「岡崎」で決着に向けた大きな動きを見せるというかたちである。見通しはよく、「岡崎」で終われば、その余韻で敵討ちが成就したことを感じさせる。
しかし、最後に敵討ちの「大詰」を置いたことで、『仮名手本忠臣蔵』の「討入り」のような活劇になってしまったことは残念である。観る者の心を動かす「岡崎」で終わり、「大詰」を省くことで得られる時間を「鎌倉」あたりでたっぷりと見せる方法はなかっただろうか。一緒に観た家内にも、「岡崎」が終わったところで「出ようか」と言ったほどである。
そのような不満は残るものの、吉右衛門に加えて歌六の幸兵衛、雀右衛門の政右衛門女房お谷、菊之助の志津馬、錦之助の股五郎、東蔵の幸兵衛女房おつやと、まさに役者が揃った。特に歌六は、「岡崎」の主役が政右衛門ではなく幸兵衛ではないかと思わせるほどの名演だったと思う。吉右衛門との芝居は細かく、決めるところは大きく、感銘を受けた。雀右衛門のお谷も、夫の敵討ちを決意するなかで捨てられ、雪の中を乳飲み子を連れて彷徨う不幸を情感豊かに演じていた。
政右衛門は幸兵衛の弟子なのだが、敵方であり、その狭間にお谷と政右衛門の実子は悲惨な最期を迎える。この『伊賀越』は、渡辺数馬と荒木又右衛門が数馬の弟の仇である河合又五郎を伊賀国上野の鍵屋の辻で討った実際の事件をもとにしたものだが、お谷は政右衛門の子を宿りながら、敵討ちのために縁組をした政右衛門に捨てられ、子も政右衛門に切り捨てられるという、実話にはない悲劇のヒロインなのである。それぞれの役者の力量が求められる段ゆえ、上演がなかなかできないことが良く理解できた。
江戸の時代、敵討ちとはこういうものだったということを分からせるには十分過ぎるほど十分な素材の散りばめられた創作劇だが、あまりにグロテクスな話に慄くばかりだった。
役者では、敵役股五郎を勤める錦之助の線の太さに驚いた。この人は、二枚目の役だけではなく、こうした役も立派に演じきるところを、近年、見せてくれている。東蔵もおつやを好演、全てを飲み込む落ち着きはらった芝居である。幸兵衛娘お袖の米吉の初々しさなどが良かった。特に若い米吉は、公演も後半に入り、この狂言の理解が進み、日ごと良くなっているのではないかと思った。

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