Posts categorized "短歌"

August 14, 2017

2017/08 短歌作品「天皇」

 「夜明け前に見る夢本当になるという」千円カットにわれ散髪をす

 体温を超えて気温の上昇し頼りは輸入化石燃料

  ネコ寝入る郵便受けに陽はかげり葡萄ひと房かぜに揺れおり

  ポタポタと壊れしままの樋のした集まる真夏の夜の雨音

  「甲子園四試合の結果は…」と野球の日でなく原爆の日

  鎮魂の夏ゆえ考え巡らせて国のかたちのいびつなるかな

  神妙に言葉をえらび改憲の意欲をみせる安倍晋三は

  米国の圧力がありつくられし象徴天皇ファジーなる影

  影さきにありて姿を仕立てつつ時代を生くる君の背中よ

  神事には女性天皇ふさわしくただ安寧を祈られよと

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撮影:2017/08/09 於:東京・銀座
Leica Q Summilux 28mm f1.7 ASPH.

July 18, 2017

2017/07 短歌作品「水戸」

 「いろいろと、とられたりして…」「出店は難しい…」とは業界人の言

 その地より東京都心に通うたび脂汗かく日々の懐かし

 平日の朝はまともに動かざる電車は今朝も抑止ばかりか

 駅前にパチスロ、ソープ、キャバクラの並ぶ街捨て何処か選ぶ

 特急のひたちに乗れば上野発ち次は水戸なり水戸へと急ぐ

 特急は優先されて遅れにも最高速度で回復はかる

 平成も終焉迎え国労も動労もまた死語となりゆく

 ひろびろと青田のつづく西側の車窓まぶしくふたり眺める

 雨降らぬこの六月のときわ路の耕されるべき土の黒さぞ

 風致地区ひろく指定されておりいかがわしきもの排除たやすし

 バイパスに近く平坦、遊技場ところどころに建つ条件は

20170708_dsc4640
撮影:2017/07/08 於:水戸市・偕楽園公園
SONY RX100Ⅲ

結社誌「短歌人」寄稿

土着的都市人として

九百号に本田稜が、「都市詠の地平」と題する評論を寄せた。都市のさまざま姿が戦後、詠われてきたことが俯瞰できる。      
私は、東京の下町で遊び学んで、その都心で職を得て働いてきたので、東京での所作しか知らない。引かれている四十首以上の過半は、東京で詠われたものだろうが、その根拠をつかめる歌はそれほど多くない。もう誰も見たことのない、過去、栄えた都市を描いているようにも思える。写真や絵画であれば、その情報量の多さ、空気感などから場所は推測できる。しかし短歌となると、ノイズやダストをまとうためか、むしろ今日に近づくほど、架空の場所のように思え、その特定は困難になる。それでも読み手の共感が得られ成立するのが、都市詠というものなのだろう。
歴史を先導するのは、都市である。と同時に、歴史に区切りを付けるのも、都市である。引かれた作品を読みつつ、都市詠のなかで秀歌と評されるのは、輻湊する現実を史実として残すための、句読点として機能する作品だと思った。
本田は、冒頭、日本の総人口の推移に言及しているが、近代化と人口増加は、都市化を必然のものとする。そして、そこに集まる者たちに、新しく、不可思議な所作を求める。歌人は、そこに着目しているわけだが、他の短歌のジャンル、例えば自然詠などと比べると、詠う者のこころの画角は狭い。一点を見つめ、対象のみを浮き立たせようとする。写真でいえば、被写界深度の狭いレンズを開放で使った時のように、対象以外は合焦しておらず、周辺減光の効果もあって、まるでトンネルの中から都市を覗き込む感じである。
加えて、いずれの歌からも、何かを見つめることで孤独感を増幅させる歌人の姿が浮かび上がってくる。詠っては、自己をどこかに押し込むことで、ようやく安息を得る。都市に住まう者の生き延びる一手段として、短歌を選び、それぞれのメソッドを確立する歌人の姿である。
これだけコミュニケーションのツール、技術が発達しても、一所に集まらなければならない人間の性をえぐり出し、描き切る都市詠をこれからも読みたい。

20170709l1000573
撮影:2017/07/09 於:横浜市・鶴見
Leica M10 Summilux 50mm f1.4 ASPH.

May 17, 2017

2017/05 短歌作品「還暦」

還暦を迎える日には撮影の依頼がありてレンズを選ぶ

新緑はすでに色濃くつらなりてクルマ少なき端午の節句

救急車が待機しており正門のわきの一方通行のみち

六義園の名物ツツジはまだ早く画にする場所をさがして歩く

鯉幟かぜなく泳がずこの日にも「毎日、日曜」の人の溢れる

同僚の幼子に会い小声にて「こんにちは」といえば見つめられたり

しばらくはレンズ向けずに追いかけっこなどして遊んでもらう

「言葉、遅いの」と心配をするママさんに「うちもそうだった」と即答したり

言葉より化学式など好むまま育ちて博士をとりたるわが子

ジグザグに走りてオートフォーカスが追えぬほどなり一歳半児は

ありがとう、おいしい、さよなら、ジェスチャーに込める心の美しきかな

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撮影:2017/05/05 於:東京・丸ノ内
Leica M10 Summilux 35mm f1.4 ASPH

April 24, 2017

2017/04 短歌作品「上野」

風薫る五月生まれのわれながら「春は苦手」と今朝つぶやきぬ

甲高く声あげ蕾の桜木のもとを幼児の列がすすみぬ

春祭の「指輪」この春完結となればわが身の定年も春

多国籍多民族多言語の今日日花見のすさまじきかな

早々に退散したりわれ肩に染井吉野の花びらを乗せ

頑なに「指輪」を演奏会方式によりて奏でるヤノフスキ氏は

われよりも十八年上ヤノフスキ氏、背筋を伸ばし指揮台に立つ

拘束の三十七年終わりただ「神々の黄昏」聴き入るばかり

終演まで五時間半の長丁場、ヤノフスキ氏は腰をさすりぬ

咲きすすむ速度の遅きこの春のさくら花びら霧雨に濡れ

週末ごとそぼ降る雨に走りゆく右の臀部は依然痛くも

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撮影:2017/04/04 於:東京・上野公園
Leica Q Summilux 28mm f1.7 ASPH.

March 11, 2017

2017/03 短歌作品「大手町」

  今朝もまだ防寒姿の人びとの両の手スタバのカップを包む

  ビル風の吹き抜けてゆく冬型の西高東低くずれていても

  舞い上がり暗殺とう文字見え隠れする新聞の一面拾う

  再開発地区に花木の類なし等間隔にフラワー飾る

  高層のビルのガラスに反射して淡き春の陽ヒジャブを照らす

  日なたにて若き白人ふざけあいその後ロビーでスマホを見入る

  肌黒く半袖のまま闊歩して高層階行きエレベータに消ゆ

  影日なたのまだら模様をつくりだすビルに息づく多文化主義は

  潮の香のただよい時雨の降りはじめ首都高下に人の佇む

  人生の切れ端のごとその日まで時間に追わるるままに過ごさむ 

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撮影:2017/03/07 於:東京・大手町
SONY α7RⅡ Carl Zeiss Sonnar T* FE 35mm f2.8 ZA

February 18, 2017

2017/02 短歌作品「春へ」

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2017/02/09 於・東京・新宿
Leica Q Summilux 28mm f1.7


 悟空とクイーン斜向かいにある角まがり聞き覚えなき言語が刺さる

 この町の在留届に記さるる百二十数カ国は何処

 体脂肪燃やしてゆくに諸準備のひとつ身体を揺らしておきぬ

 マドンナの歌声消えゆく五本目のサイドランジに床ぬらす汗

 Go Shape, Make Bodyと次々にマシンは埋まり動きはじめる

 観の目を保ちて静かに上体を起こすグリコの姿勢のままに

 今日もまた海兵隊のメソッドによりて体幹鍛えておりぬ

 麻央さんのブログ読みつつ乗りこめばエレベータに子ら騒がしく

 雲なけれども星かがやかぬ駅頭にしばし天空見あげておりぬ

 裏通りに星のいくつか見えはじめスマホをいじる男をかわす

 無灯火の自転車飛ばす青白く顔照らされて死にゆくごとく

 弓張はしずむ気配のなきままに丘のうえより団地を照らす

 節分のよるは風止みあたたかく「福は内、福は内」と声しぼりだす

 立春のあさ足下のカタバミは黄色き花弁しずかにひらく

 ベランダの洗濯物のあいだよりのぞく笑顔に合格を知る

 両の手でわれ丸つくり合図してわが子のことのように喜ぶ

 丹田に意識あつめて力抜きゆるき坂道すいすいのぼる

 梅咲けば春じんわりと感じたり前途曖昧なれどもはしる

January 12, 2017

2017/01 短歌作品「道」

 この春の開通に向け高架上はしる車輌に導風板あり

 一斉にかもめ群がる水面には冬陽きらめき諦めもある

 見霽かす河口に川鵜は生きておりときおり潜りしばらく消える

 モチベーション、コミットメント、プライドの交錯しつつ定年となる

 「生きるため」とは偽りであり還暦間近われ悪あがき

 初春のお供え餅に伊勢海老の一匹、ダミーのわが人生は

 フォアグラの練り込まれているテリーヌが今宵わが家の夕餉なりき

 一升瓶よりワインとくとく注ぐときグラスに映るわれの首筋

 裏道をゆけば雨粒の落ちてきて猫より声をかけられており

 足音の違いわかるか猫は二度三度ないては前足舐める

 雨あしの強まり足あと残すことなくて存外ひと多き刻

L1030927ver3
撮影:2017/01/05 於:東京・銀座
SONY α7RⅡ Carl Zeiss Sonnar T* FE 35mm f2.8 ZA

December 19, 2016

写真日乗2016/12/10~旧かな遣いの二人(短歌人本誌寄稿文)~

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撮影:2016/12/07 於:東京・銀座
Leica Q Summilux 28mm f1.7

このところ、新年歌会などに出席していないため、新しく短歌人に加わった人たちのことを知るすべがない。ゆえに、毎年八月に組まれる「20代・30代会員競詠」は貴重だ。

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October 17, 2016

2016/10 短歌作品「襲名」

  興行と芸道の二百年ない交ぜのままの歌舞伎は

  はなやかに襲名の月迎えたる十月雨の多きこの頃

  芝翫以下子の三人橋之助福之助歌之助四人の披露

  諸先輩方のお許し、並びに関係各位のご賛同を得て

  雀右衛門、芝翫とつづく襲名の新歌舞伎座は三年目の憂

  勘三郎、團十郎、三津五郎失い穴のあきたるままに

  藤十郎、吉右衛門に菊五郎、玉三郎そろい始まる口上の幕

  芸の道深淵なれど人の道軽々とゆく梨園のひとは

  それぞれに事情はあれど肥やしなどになると許さる「とざい、とーざい」

  松綠の「外郎売」の長ぜりふ眼つむれば二世の浮かぶ

  藤の精勤めるひとは国宝の玉三郎ゆえ本日大切

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撮影:2016/10/09 於:東京・歌舞伎座
Leica Q Summilux 28mm f1.7

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