小曽根真ジャズワールド
市川で開かれた小曽根真ジャズワールドを聴いてきた。前日の夜から雨がしとしと降り、5月尽とは思えぬほどの肌寒いの一日、しかし会場は、パートナー塩谷哲(p)との息のあった演奏に熱気があふれていた。
今日の演奏会は、小曽根曰く、「久しぶりにこのような大きなホールで・・・」ということだが、ラ・フォル・ジュルネの大ホールで弾いている。ジャズでは、いまだにライブハウスでの演奏が多いのだろう。やはり小曽根はジャズの人なのだ。
聴衆もやはりジャズの人たちが多く、クラシックのコンサートのレベルからすれば、当然のことながらうるさい。隣のお姉さんの携帯は、電源が切られておらず、マナーモードとはいえ、ぶるぶると何度もバイブレーションがなっていた。たった2時間ほどのライブの間も、ちゃんと着信、メールの受信をしなければ生きていけないような職業なのであろうか。今日は、土曜日である。切ればよい。
とはいえ、ふたりの演奏のすばらしさにストレスのないひとときを過ごすことができた。
演奏された曲は、
クリスタル・ラブ 小曽根真
ピアノソナタ嬰ハ短調 ショパン
Laure's Dream ビアソラ
あこがれのリオデジャネイロ 塩谷哲
2台のピアノのためのソナタ モーツアルト
Something Happening
Life is you 塩谷哲
曲数は少ないが、クラシックの曲なども十分な準備をして臨んだ、すばらしいライブだったと思う。
特にモーツアルトのソナタは、3楽章すべてを演奏、2楽章、3楽章に進むにつれ、モーツアルトの楽譜から大きく外れ、小曽根らしい機知に富むインプロビゼーションが披露され、感嘆した。
塩谷もなかなかのテクニシャンで、小曽根が弟分と呼ぶだけのことはある。
小曽根は、オスカー・ピーターソンを聴いてこの世界に入ったピアニストだが、音色、タッチという点では、チック・コリアに雰囲気が近い。一方、塩谷は芸大中退らしく、クラシックの資質がバックボーンになっている。ジャズの世界でいえば、ビル・エバンス的な音のニュアンスだ。
その二人がモーツアルトの名曲に挑戦したわけだが、やはり小曽根が自由自在に弾き、塩谷が楽譜から離れないように弾くというバランスだった。もちろんクラシックのレベルからすれば、傷は多かったが、それを上回るエキサイティングな演奏で、クラシックの演奏家にも聴かせたいほどのものだ。
そういえば、2年前のラ・フォル・ジュルネで児玉桃、麻里姉妹の演奏を聴いているが、私の記憶では、二人とも譜面を見ながらの演奏だった。一方、今日の二人は暗譜である。それだけでも立派だと思う。
ジャズの曲は、小曽根、塩谷のオリジナルが中心だったが、いずれもメロディアスで、二人のコンポーザーとしての力量も証明した。二人とも、バラードをうまく書き、弾く。そのことがより理解できた。
会場には、二人のディスクが山積みにされ、購入者にはサイン会に参加できるという趣向だったが、小曽根のディスクを自宅でうまく再生することは、おそらく難しいであろう。ダイナミックなピアノの響きや床やペダルを打つ靴音などは、ふつうの家のコンポでは絶対に再現できない。
ゆえに小曽根に限って私は、CDを購入することを自ら禁じている。失望したくないからだ。小曽根は、まさしくライブの人であり、年に何回か、小曽根と同じ時間、同じ空気を吸うことを楽しみたい。
9月には、オペラシティのコンサートホールで、モーツアルトが聴ける。今回も9番ジュノムだ。最近、27番も弾いているようなので、チャンスがあれば、これも聴いてみたい。
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