10月の短歌作品
難読
莨《たばこ》吸うものだけ占有しうる場所二十二階北神田見下ろす
令《いいつけ》をまもらざるもの左遷とぞ地上に落下してゆく木の葉
顳《こめかみ》に蚊の一匹が止まりたり払えどふたたび止まらんとす
谺《こだま》ひびく丸の内にはハレーション盛大に出るレンズをつかう
右にだけ出る靨《えくぼ》なる左より撮ればわずかに表情の増す
東京はマドリッドに亜《つ》ぎ三位なり夢見しものら睡りにつきぬ
「鎹《かすがい》は金だけ」という男いて冷静沈着ただただ無口
篦《へら》をもつ職人二十時すぎてなお白熱灯のもと仕事つづける
中川氏、秋の日の朝死す酒におぼれて死すと熟熟《つくづく》おもう
中川家に夫婦のともに睡る閨《ねや》なくてひとりであの世にゆきぬ
遖《あっぱれ》と賞賛されて死する人おらぬ時代にわれ生かさるる
磧《かわら》にはビニール袋の幾枚もうち上げらるる水かさの減り
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